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カニだから好きになったわけじゃない。好きになった相手がカニだった――それだけだ。あれは八月の暑い夏の日のこと。僕はカニを連れて江ノ島へ向かった。サーファーたちで賑わうビーチを横切り、鳥居をくぐった先の売店でブルーハワイのかき氷を買う。「変ね、人工で作られた青の方が綺麗」海とかき氷と見比べて、カニはどことなく寂しそうに笑った。石段を登った先、弁天様に手を合わせ、島の反対側、稚児ヶ淵についた頃にはもう日...