めげない、めげな~い。
「長くなっちゃったんで全体的に短くしてください」
「刈り上げる感じ?」
「いえ、刈り上げない程度に」
「分け目の方は?」
「いえ、分け目はあまり好きではないので」
美容室を避け、あえて千円散髪を選んだのには理由がありました。
連日連夜の睡眠不足、基本昼間は夢うつつ。
呆然と座って髪切られてる時くらいは、眠っていたいじゃない?
美容室のお姉さんは、やたら話しかけてくるんだもの。
髪型にこだわりはありません。
周りの目気にしないのがB型ですから。
瞳を閉じて数分間。
優しいハサミに撫でられて。
チョキチョキチョキと心地よく。
うつらうつらと夢の中。
瞳を閉じて数分後。
ファッサア! と右側が急に軽くなって。
目を見開くと正面の鏡に
IKKOがいました。

右側だけIKKO。
(片翼失っちゃったよ、おい)
(クシで真ん中からペタペタって、それ分け目作ってんじゃないの?)
(どんだけ~? めげない、めげな~い)
とまあ、言いたい事はたくさんありましたが、こちとら生粋の人見知りな訳で
(今度はショートミディアムの黒髪パーマにしたいな(キリッ……て伸びるまで何ヶ月待ちゃいいんだおい)と絶望したまま、再び目を伏せてしまった訳です。
次に瞳を開いたのが前髪を切る時。
恐る恐る鏡を覗き一安心。IKKOの面影は露と消えていました。
ただ、
美川憲一がいました。

(わお。これは夢ですか? 紅白ですか?)
(いいえ、私はさそり座の女です)
(おだまりっ!)
気にするよ。
周りの目気にしないB型でも、さすがにこれは気にするよ。
(いやあ、ホント全体的に切ったねえ、おばちゃん)
(俺にはまだKENICHIカットは早すぎるってゆーか……恐れ多いってゆーか)
(おやおや、その、バリカンを上方に入れてんのって、刈り上げって言うんじゃないの?)
(ピアス付けたら和田アキコみたいじゃない? やべえ、それツボだよ、おばちゃん)
とまあ、言いたい事はたくさんありましたが、こちとら天性の引っ込み思案な訳で
「あ、もう、こんくらいが丁度いいです……」と苦笑うのが精一杯だったのでした。
わかっています。おばちゃんは悪くない。
おばちゃんは誠心誠意やってくれました。
たった千円で髪の重さが半分以下になったのですから、「得したぜ!」とガッツポーズをとって然るべきなのかも知れません。
ただ。
なぜでしょう。
店を出て一歩目に吹いた風があまりに頭に冷たくて、反射的にニット帽を被りました。
そして誓ったのです。
「ここにはもう来ない」と。
どうか今日という日を、二度と忘れませんように。
「めげない、めげな~い」
「刈り上げる感じ?」
「いえ、刈り上げない程度に」
「分け目の方は?」
「いえ、分け目はあまり好きではないので」
美容室を避け、あえて千円散髪を選んだのには理由がありました。
連日連夜の睡眠不足、基本昼間は夢うつつ。
呆然と座って髪切られてる時くらいは、眠っていたいじゃない?
美容室のお姉さんは、やたら話しかけてくるんだもの。
髪型にこだわりはありません。
周りの目気にしないのがB型ですから。
瞳を閉じて数分間。
優しいハサミに撫でられて。
チョキチョキチョキと心地よく。
うつらうつらと夢の中。
瞳を閉じて数分後。
ファッサア! と右側が急に軽くなって。
目を見開くと正面の鏡に
IKKOがいました。

右側だけIKKO。
(片翼失っちゃったよ、おい)
(クシで真ん中からペタペタって、それ分け目作ってんじゃないの?)
(どんだけ~? めげない、めげな~い)
とまあ、言いたい事はたくさんありましたが、こちとら生粋の人見知りな訳で
(今度はショートミディアムの黒髪パーマにしたいな(キリッ……て伸びるまで何ヶ月待ちゃいいんだおい)と絶望したまま、再び目を伏せてしまった訳です。
次に瞳を開いたのが前髪を切る時。
恐る恐る鏡を覗き一安心。IKKOの面影は露と消えていました。
ただ、
美川憲一がいました。

(わお。これは夢ですか? 紅白ですか?)
(いいえ、私はさそり座の女です)
(おだまりっ!)
気にするよ。
周りの目気にしないB型でも、さすがにこれは気にするよ。
(いやあ、ホント全体的に切ったねえ、おばちゃん)
(俺にはまだKENICHIカットは早すぎるってゆーか……恐れ多いってゆーか)
(おやおや、その、バリカンを上方に入れてんのって、刈り上げって言うんじゃないの?)
(ピアス付けたら和田アキコみたいじゃない? やべえ、それツボだよ、おばちゃん)
とまあ、言いたい事はたくさんありましたが、こちとら天性の引っ込み思案な訳で
「あ、もう、こんくらいが丁度いいです……」と苦笑うのが精一杯だったのでした。
わかっています。おばちゃんは悪くない。
おばちゃんは誠心誠意やってくれました。
たった千円で髪の重さが半分以下になったのですから、「得したぜ!」とガッツポーズをとって然るべきなのかも知れません。
ただ。
なぜでしょう。
店を出て一歩目に吹いた風があまりに頭に冷たくて、反射的にニット帽を被りました。
そして誓ったのです。
「ここにはもう来ない」と。
どうか今日という日を、二度と忘れませんように。
「めげない、めげな~い」
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